睡恋─彩國演武─
*
廓に戻り、部屋の戸を閉めると同時に深いため息を吐きながら、藍はがっくりと項垂れた。
「大丈夫……?」
心配して声を掛ける千霧に、力無く返事をする。
「……大丈夫じゃない」
髪の毛をがしがしと引っ掻くと、彼はパッと顔を上げて鏡台の前まで移動した。
「今日は血色悪いし、髪の艶もダメダメ」
「は?」
「アイは僕の分身なんだから、綺麗なのは当たり前なの。──でもこの顔色、絶対に皆うるさいよ」
まじまじと自分の顔を観察する藍。
ああでもない、こうでもないとブツブツ呟きながら、眉間に皺を寄せている。
「──十分、綺麗だと思うけど」
千霧が何気なく口を挟むと、藍はぴくりと反応した。
「十分……?」
「う、うん、そう言った──」
スッと無言で立ち上がり、藍は千霧に顔を近付ける。
間近で見る彼は、千霧の目から見ても本当に美しかった。
シミ一つない白くてきめ細かい肌、長い睫毛に、小さな鼻と口。
一体今に至るまで、何人を魅了して来たのだろう。
「あー悔しい。千霧は自覚が無いんだよね」
「自覚?」