睡恋─彩國演武─
「そ、自覚。すごく勿体ないよ、それって。こんなに綺麗なのに」
「な──ッ!」
彼の唇がニッと横に伸びた瞬間、戸が勢いよく開けられた。
「何してるんですか?」
声の主は、仏のような笑みをたたえながら、殺気に満ちた声で問う。
「何って、肌が綺麗だって褒めてたんだよ。ね、千霧」
「あ……うん」
千霧を頷かせると、藍は得意気に呉羽を見る。
「──じゃ、僕は用事があるから抜けるよ」
ひらりと千霧の傍から離れると、藍は手を振りながら部屋を出ていった。
部屋には二人が残ったが、由良の姿が見えない。
「──由良は?」
「酔いが激しいみたいです」
「……」
彼は、空と地上など関係なく『乗り物』に酔うようだ。
千霧は苦笑するしかなかった。