睡恋─彩國演武─
*
いっぽう藍の部屋では口論が絶えなかった。
もちろん、どちらの蒔いた火種かはわからないが。
「もっとましな言い方は思いつかなかったんですか?」
「辛く当たんないと千霧は鈍いから気付かないじゃないか!第一、アンタだって気付いてたなら僕より先に伝えれば良かったんだ。もっとやさしーく、ね?」
「言葉をつつしんで下さい。それに……」
(憎まれ役は貴方の仕事ですよ)
ゾゾッと、藍の背筋に寒気が走る。
呉羽がにっこり笑っている。この状況で。
「……アンタがそうやって笑ってるとロクな事がないんだよなー」
おとなしく身を退いて、藍は頬杖をついた。
「──まぁ、藍だけが憎まれ役になるのも可哀想ですね。私にも責任がある」
「そもそも、何でアンタはそこまで千霧に執着するの?今までの龍に対する態度とは別物じゃん」
「それは──」
藍相手の口論に、珍しく呉羽が言葉を詰まらせる。
藍にとっては非常に興味深いことだったが、彼もそこまで非情ではない。