睡恋─彩國演武─





いっぽう藍の部屋では口論が絶えなかった。

もちろん、どちらの蒔いた火種かはわからないが。


「もっとましな言い方は思いつかなかったんですか?」

「辛く当たんないと千霧は鈍いから気付かないじゃないか!第一、アンタだって気付いてたなら僕より先に伝えれば良かったんだ。もっとやさしーく、ね?」


「言葉をつつしんで下さい。それに……」


(憎まれ役は貴方の仕事ですよ)


ゾゾッと、藍の背筋に寒気が走る。

呉羽がにっこり笑っている。この状況で。


「……アンタがそうやって笑ってるとロクな事がないんだよなー」


おとなしく身を退いて、藍は頬杖をついた。


「──まぁ、藍だけが憎まれ役になるのも可哀想ですね。私にも責任がある」


「そもそも、何でアンタはそこまで千霧に執着するの?今までの龍に対する態度とは別物じゃん」


「それは──」


藍相手の口論に、珍しく呉羽が言葉を詰まらせる。

藍にとっては非常に興味深いことだったが、彼もそこまで非情ではない。


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