睡恋─彩國演武─
「わざとだよ、冷たくしたのはさ。千霧を里津に行かせたらダメなんだ」
「っていうことは、なにか理由があるんですよね……?」
「まぁね。君も感じてると思うけど、里津からは嫌な感じがするんだよね。……千霧を危険にさらすのは四聖として本意じゃない。でも、理由を話したら千霧は里津を放っておけない。──お人好しだからね」
「千霧様が危険な地へ行かないように……ってことですか。それなら、頷けます」
さすがだ、と由良は思った。
自分だったら、そんなことまで気がまわらない。
同時に、藍が王子であったことに喜びをおぼえる。
(物事を判断する冷静さ、やはり王子は聡明な方だ。白樹の王となられる器──)
「うん。……ま、要するにちょっと休憩なんだよ、千霧は」
「そう、ですね。──俺も賛成です」
藍は頷いて、ニヤリと笑う。
「素直なのは、良いことだね」
後は千霧をどう納得させるかだ。
呉羽に任せるにしても。
(アイツ口下手だからなぁ……)
藍の心配は尽きなかった。
しかし、隣にいる由良を見ると、瞬時に何かを思い付き、指をパチンと鳴らした。