睡恋─彩國演武─





星麟から青城まで、さほど距離はない。

数時間、道に沿って歩けばそこはすでに城下だった。

そして今、由良は目の前に出された湯気のたつ饅頭を頬張っている。


「よく食べるね」


「おいひぃでふよ。王子も食べ……」


「遠慮するよ」


その隣に座って、藍も水蜜桃に歯をたてる。

青城の城下は賑わっていた。

活気もあり、店が沢山並んでいる。

千霧に害をなす気はおよそ感じられない。

特に味わいもせず食べていると、由良がやっと口内の物を飲み込んで息をつく。


「ふう……。こんなに食べたの初めてです」


「だろうね。ま、好きなだけ食べれば?銀子ならいくらでもあるんだし」


「い、いいえ!これ以上王子にそんな迷惑は……」


「別に、君が痩せすぎだから太らせてるだけ。白樹でろくなモノ食べてないんだろ。──見ればわかる」


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