睡恋─彩國演武─
「あ……」
藍から視線を外すと、由良は背中を丸めて、手元にまだ残っている饅頭を見つめる。
紅い瞳に映る由良は、確かに痩せて、ひ弱に見えた。
以降、全く饅頭を口に運んでいない由良を見かねて藍は呟く。
「もし今、申し訳ないとか思ってるなら、将来的に僕の役に立てばいい」
「……え?」
「国を治めるのは楽じゃないってこと。僕の補佐は、もちろん君がするんでしょ?──ほら、饅頭冷めるから食べなよ」
嫌だって言ったら国が亡ぶかも、と冗談まじりに言ってみせれば、由良は簡単には饅頭にかぶり付いた。
「俺、王子に莫迦にされないくらい、優秀になってみせます……!」
「はいはい。楽しみにしてるよ」
ほんの少し、藍の表情が柔らかくなる。
それは由良が今まで見てきた中で、最も優しい彼の表情だった。