睡恋─彩國演武─
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薄暗い闇の中、豪奢な椅子に腰かけた青年の足許には、長身の男が跪いていた。
青白い月明かりが、闇に隠された青年の姿を晒す。
髪は焔のように紅く、瞳は金色に輝いている。
端正な顔立ちは、冷たい笑みに歪んだ。
「──なぁ蒐。お前の後ろにいるのは誰だ?見ない顔だが……」
「新しい側近です。見込みがあるので、兵の中から引き入れました」
「そうか。お前が目をかけるとは珍しいな。──そこのお前、名は?」
蒐の影から、一人の少年が現れる。
中性的な顔立ちが美しく、武人とは思えないほど華奢な体つきだ。
「──千珠(せんじゅ)とお呼びください、皇子」
紅い瞳が闇に浮かんだ。
紅玉か、あるいは血の色。
青年は微笑し、ようやく腰を上げて少年の近くへ移動した。
「──気に入った。千珠、オレのことは珀(はく)と呼べ。良いな?」
千珠はまばたきをし、それから頷いた。
「珀様の御心のままに」