睡恋─彩國演武─
*
人影のない稽古場で、二人は剣を構えた。
「動きを止められたり、剣を放した方が負けだ」
「承知しました。──では、参ります!」
その声と同時に、千珠が斬り込んだ。
珀はそれを素早く避け、千珠の背後に回る。
「──ッく!」
急な攻撃を受け止めると、千珠の身体が後退した。
剣に伝わる力の差。
「ほら、実力を見せてみろ」
さらに込められる力に、千珠は抗えずどんどん後退していく。
(どうすれば……)
千珠は剣に力を入れたまま、しゃがみこんだ。
それから小柄な体躯を利用し、受け身をとりながら急に力を抜く。
すると、支えが無くなり珀がほんの一瞬だけ体勢を崩した。
「な……っ!?」
その隙を突いて、千珠は珀の喉元に刃先を向けた。
「一本」
「……」
身動きのとれない状態で、珀はどことなく嬉しげに「参った」と呟いた。
剣をおさめて、千珠は笑った。