睡恋─彩國演武─
一つ一つの個体は、さしたる強さを持たない。しかし、群れをなす事で互いの能力の欠損を補おうとする。
千珠は容赦しなかった。いや、容赦を知らなかった。
紅い瞳に、鮮血の色が混じる。
「あ……あ……」
異形の屍の中に残ったのは、幼い少年だった。自分が見た光はこの少年だったのだ、と千珠は気付く。
少年はひどく脅えた様子で、千珠を見上げた。
「大きな怪我は……してないな。良かった」
「あ……」
千珠の優しい声音に安堵したのか、少年は千珠にしがみついた。まだ恐怖が残っているのか、震えている。
これではとても、この業火を掻い潜ることはできない。少年を庇うように抱き締めると、千珠は己を奮い立たせようと目を瞑る。
「こっちだ千珠!」
頭上から響いた声の主は、珀だった。天夢の背中から千珠に手を伸ばしている。千珠は迷わずその手を掴んだ。
ほっそりしたその肢体の何処に力が隠れているのか、少年を抱いたままの千珠を簡単に引き上げると、自分の前に乗せる。