睡恋─彩國演武─





辺りは静かだった。不気味なほどに、静寂に包まれていた。

今は虫の声もしない。



「一人も……いない……?」


蒐の部隊は、連絡のあった場所に待機していたが、誰一人逃げ延びては来なかったのだ。

捜索もさせたが、見つかったのは無惨な死体のみ。

結局、生き残ったのは千珠が保護した少年だけだった。

千珠は目を伏せて報告を聞いていたが、視線を泳がせた際に蒐と目があった。


「その子供……」


蒐は千珠に抱えられた少年を見るや、険しい顔つきになる。


「異形の匂いがする……」

「当たり前じゃないか。今まで異形に襲われていたんだから」

「否、そういう意味ではない。──その子供自体が匂う」

「莫迦な。天夢が今まで大人しく背に乗せていた。この子は人間だよ」


それから暫くして、珀の命令で城へ帰還することになった。

少年は、珀の計らいで千珠の部屋に通された。

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