睡恋─彩國演武─
「なんならずっと此処に居ればいい」
突然の第三者の介入に一番驚いたのは千珠だった。
「は、珀様!?」
「悪いな、勝手に入って」
「いえ……それは構いませんが……」
合図もせずに他人の部屋へ侵入したのだから、常人なら咎められても仕方のない状況だ。
しかし、珀のすることは全く無礼だ非常識だなどとは思えず、ついそれが当たり前のような対応をしてしまう。
「なぜ此処へ?」
「いや、さっきの……ああ、そう、お前だ。名前は?」
千珠の影に隠れていた少年を見つけると、珀はしゃがんで目線を合わせた。
普通、皇族とは気位の高いもので、庶民の為に自らの目線を合わせるなどけしてしないものだ。
でも珀はそれを当たり前にやってのける。そんな彼の器の広さに、千珠は強く惹かれていた。
「き……癸火(きほ)」
「癸火か。オレは珀だ。……お前、行く当てはあるのか?」
「ないよ。母さんは異形に殺されて……父親は誰だかわからないし」
「そうか。じゃあ、選択権は無しだ。──ひとつ部屋をやるから、此処にいろ」
「え……っ!?」