睡恋─彩國演武─

寝息を立てている癸火を寝台に運んでから、珀は一息ついた。


「お茶を淹れましょうか」

「ああ……頼む。なぁ、今日はコイツのこと、此処に泊めてやってくれないか。明日には部屋を用意させる」

「ええ。最初からそのつもりでしたから……寝台も私一人では広すぎるくらいですし、珀様は気になさらないで下さい」

「……すまないな」

「いえ……」

千珠はお茶を差し出しながら苦笑いをした。皇子という高い地位にありながら、こうして部下に気を遣う優しさが、珀の長所なのだ。


「茉莉花か?」

「はい。香りが好きで……。落ち着くので」


ふわり、と花の香りがする。

茶を飲みながら、そういえば千珠からはいつも花の香りがしている……と珀は思った。

しかし目の前の千珠を見た途端、なにか自分が下劣な浅ましい人間に思えた。

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