睡恋─彩國演武─

〔弐〕瞳の彼方



〔弐〕瞳の彼方



朱陽の王宮は騒然としていた。

──第二皇子の失踪。

それを聞いて、真っ先に泣き崩れたのは沙羅だった。

「千霧様が居なくなったなんて、嘘ですわ。だって……戻るって。沙羅に誓ってくださいましたもの……」

その肩を抱いて、紫蓮は呉羽を見た。

「龍になる……それは、千霧という人格の消滅を意味するのか?」

呉羽は唇を噛んだ。

それは呉羽にも、いや、四聖にもわからない。

以前の龍は、人の形ではなかった。生まれた時から、純粋な龍なのだ。

「紫蓮……そう熱くなるな。呉羽殿、悪く思われなさるなよ。千霧のことは、四宝の王を当たって陽の全土を捜索させよう。白樹の王子も戻ったようだしな」

視線を受けて、藍は頷いた。

「千霧様は彩國にとって大切なお方。この白藍、ご助力致します」

「心強いな、王子よ。白樹も安泰だろう」

「勿体なき御言葉です、皇」
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