睡恋─彩國演武─

藍に向かって微笑んだ後、紫劉は三人を見回した。

「既に白虎、朱雀、玄武が集まった。これは変調の兆しかもしれぬな」

「──何か起こる前に、千霧を見つけなければいけませんね、父上」

「そうだな……ああ、そうだ。丁度よく、青城の王子が来ておるのだ。皆にも紹介しておこう」

沙羅が背後の扉を開くと、人影が揺らいだ。

姿を現したのは、青城の象徴である淡い青色の衣装を纏った、凛々しい少年。

「──お初にお目にかかります。青城第一王子、火麟(かりん)と申します」

火麟は一礼すると、呉羽達を一瞥した。

女のように華奢な風体ではあるが、その眼光に宿る威厳はまさしく王子と呼ぶに相応しいものだ。

「実はな、王子も人捜しをしているのだ」

紫劉と視線を交わし、火麟は頷きながら再び口を開いた。

「──弟を捜しております。父の側室の子です。腹違いではありますが、私の弟に変わりはありません」

「その弟が、どうして居なくなったんだい?」

「父は弟の存在を隠していました。側室の存在も。先日、その父が病に倒れた際に初めて知らされたのです。弟と側室は、とうの昔に国を追われていました」

「へえ。側室を追放なんて、お父上殿は薄情なものだね」

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