睡恋─彩國演武─

千霧の意思を確認すると、呉羽は語り始めた。


「……貴方は、正確にいえば今はまだ『蛟(ミズチ)』の状態。まだ龍として完全に目覚めていない、子供の状態です。蛟のままでは、異形に狙われ、貴方の存在は陽にとって凶となります。完全な龍になるには……」

「四聖の力が必要なんでしょう?」

「はい。ですが、先代の龍が消滅した時から彼らの行方はわかりません。それに、今は四聖だった頃の記憶を無くし、人として暮らしている者もいるはず」


四聖とは、龍を護る役目を持った者。

それが先代の消滅後、散り散りになってしまった。

呉羽は四聖の一人で『白虎』。


彼は、記憶を持っていた為に一人で龍を捜していた。

他にも朱雀、玄武、青龍がいて、それらを全員集めて力を借りないことには、千霧は龍として完全な力を得られない。

「……探そう。彩國のどこかに居るなら、必ず逢える」

彩國は広い。

よほどの強い縁(えにし)がなければ、いくら捜しても逢えないだろう。

でも、諦めることは出来ない。

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