睡恋─彩國演武─
目覚めと同時に部屋中に響きわたる悲鳴。
最初、それが誰の声だかわからなくて、ただ把握できない状況に咽び泣いた。
そして気づけば、いつも母が優しく抱き締めてくれていた。
「千霧……ごめんなさい」
何度その言葉を母の口から聞いたのだろう。
「……どうして母様、泣いてるの?」
幼い自分が、問いかける。
母は少しだけ笑って、私の髪を撫でた。
微かに潤んだ瞳。
「どうしてでしょうね。私にも、わからないの」
綺麗な涙だった。
美しい母の流す涙は、何よりも輝いていた。
その一粒が、母の頬を伝って、千霧の頬を濡らした。