睡恋─彩國演武─
「……それならどうして、謝るの?」
単純に知りたいだけだった。
だって、あの日の私はまだ子供だったのだから。
大した答えなんて、別に欲しくはなかった。
「私が異形だから、あなたを人間に生めなかったの」
そんな答えは、聞きたくなかった。
目の前の道が、闇に包まれていくような絶望。
「ごめんなさい。本当なら、その呪われた宿命は母のもの。宿命があなたを殺せというなら、私が死ぬわ」
「母様……?」
いつの間にか母の手に握られていたのは短刀。
その先にある意味を知らず、刃先から零れる光を見つめていた。
「……殺してあげられなくて、ごめんね。強く、生きて……?」
それが母の最後の言葉になった。
「……母様……かあさま!」
いつまでも目を覚まさない母に不安を抱き、何度も体を揺すって。
異常に冷たい身体。
「うぁああぁあ!」
『死』というものを、一番大切な人によって知らされた。
大切な人の、死によって。
だからこの運命からは逃げられない。
逃げてはいけないんだ。