睡恋─彩國演武─

「紫劉様、私は異形の子など産みたくはありません……産めというなら、死を選びます!」


人外の子を孕んだことに恐れをなした王妃は、人外の赤子を産むくらいならと自害を試みたこともあった。


しかし、できなかった。


王妃の躊躇などではない。腹の中の子供は、何か強大な力によって守られており、傷付ける事さえ叶わなかった。


そして、ついにその子は生まれたのだ。


「……これは!」


出産に立ち合った医師達が一斉に口をつぐんだ。


生まれた子には、性別がなかった。

女としても、男としても、欠陥がある。しかし、双方の特性をもつ

“半陰陽”

龍の言葉通り、人としての当たり前の幸せを、けして得られぬ体だったのだ。


「この子は、神と契るという意味を込めて“千霧”と名付けよう」


紫劉は腕に抱いた赤子を高く天にかざして言い放った。

真っ白な雪のような赤子。
その身に人々の業を受け、生まれてきた皇子。


千霧(ちぎり)。

その名を与えられた時から、その運命は陽と共にある。

< 7 / 332 >

この作品をシェア

pagetop