睡恋─彩國演武─
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明朝、王宮の広間に重役達が召集された。
皇をはじめ、紫蓮や多数の武官、大臣、それから女官長である沙羅。
もちろん其処には千霧と呉羽の姿もあった。
「皆に集まって貰ったのは、伝えておかねばならぬ事があるからだ」
紫劉が威厳ある声で告げた。
突然のことに、集まっていた重役達はざわめく。
「──静かに」
毅然とした態度で紫蓮が場をおさめ、紫劉は話を再開する。
「もはや彩國の異変に気付いておらぬ者は居ないだろう。我が皇子、千霧はこれよりこの彩國の為に朱陽を出る」
集落は異形に襲われ、陰からは出ないはずの異形が陽に溢れかえる。
かつてない異常に、ついに朱陽が動き始めた。
「──千霧」
紫蓮の合図に、千霧はゆっくりと上座へ上がる。
「今、彩國は守護神である龍の消滅をさかいに、異形で溢れ返っています。陰との約定の通り、それは本来あるまじきこと……」
周りがざわつく中、沙羅は千霧の演説に、じっと耳を傾けていた。
「私は皇のご意思により朱陽を出たことはなく、他国に存在を知られていない。……今や皇子としての役目はありません」
皇が忌み嫌い、隠し通した禁忌の第二皇子。
その皇子であると知られれば、必然的に族や異形から命を狙われる可能性が高くなる。
「──では第二皇子は、身分を棄てて立場を蔑ろにされるのか」
武官の一人が、皮肉めいた口調でぼそりと呟いた。
周りの大臣たちも同調し、千霧に対する批判の声が上がり始める。