睡恋─彩國演武─
*
急な悪寒に目が覚めた。
身体中を這い上がるような寒気に、身震いする。
「うぅ……ぁああぁ!」
同時に強烈な頭痛に襲われ、体が跳ね上がる。
『イタイ』
『タスケテ』
『タスケテ』
『イタイ』
無数の声が、救いを求めてくる。
それが響き渡って、身体の中で反響するかのように。
「千霧様……!」
肩で苦しげに呼吸をする主を支えるが。
異形の声が千霧にかける負担だけは為す術がなく、彼はただ、己に苛立ちながら見守ることしか出来なかった。
千霧はうなされながら、あの白昼夢の少年の声を聞いた。
「……怖い?」
少年はあの時の質問を、再び千霧に問う。
不思議と、痛みが和らいだ。
「怖いよ。とても、怖い。私は、自分の背負ったものの重さを知ってしまったから」
「では貴方の背負ったものは、自分を犠牲にしてまで守りたいもの?」
「……そうだよ。そのくらい、大切なんだ」
千霧は少年に告げることで、己の覚悟を確認した。
迷いなどなかった。
「貴方の答え、しかと聞かせていただきました」
いつの間にか、仮面をつけた少年が千霧の前に立っていた。