空のギター
「皆さん成長期ですねー……ところで、今回の新曲はどういった感じなんですか?」



 司会者に聞かれ、Kouyaが説明を始める。メンバー達の視線が彼に集まったので、話し出したという感じだ。元々目立ちたがり屋ではない彼だが、最年長という責任感もあってか、やや堂々と振る舞っているように見える。メンバー達は内心“愛ある微笑”を浮かべていたことだろう。



「えーっと、今回は作詞家の方に詞を書いて頂きました。テーマは“失恋”で女性の目線から書かれてるんですが、Setsunaがハイトーンボイスで歌い上げてくれます!」

「前回は“卒業”で今回は“失恋”……何だかアイドルらしからぬ流れですね。」



 司会者の言う通り、戦略的にはこのような流れを取らず、二枚目のシングルでガラッとイメージを変えた方が良いのではないかという気がする。しかし、S.S.Gはあえてこの流れを持ってきた。果たしてどういう意図があるのだろうか。

 観客が唸っていると、Setsunaが「テーマは悲しいですけど、メロディーは対照的に明るいんですよねー。このギャップに、俺達ちょっと期待してるんです」とこぼす。おばけ屋敷の脅かし役の笑みをたたえながら。
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