空のギター
 続いて、Trickstersの二人が中央に進み出る。彼らがそうしただけで織春の時の何倍もの黄色い声が飛び交い、人気の高さが窺える。司会者が希楽と和洋が歌う曲を口にすると、ファンの女子達が一際大きい歓声を上げた。そんな彼女達に笑みを向けながら、二人はBGMを耳に、手にしていたマイクを口元まで持ち上げる。間もなく、魅惑のハスキーボイスと温かい美声のデュエットが始まった。

 ──恋人への思いを歌った女目線の曲。必要以上の心配をしてきたり、年を追うごとに変わっていったりする彼のことが何よりも愛しいとう気持ちが、優しい言葉で描かれている。

 クリスマスなんて要らないくらい、毎日が幸せで愛に溢れている。これから先もずっと一緒に居たい。そういう乙女心を、希楽と和洋は力強いながらも繊細に歌い上げてくれた。



「……Trickstersのお二人、ありがとうございました!素敵なハーモニーでしたねー……」



 司会者が先輩二人の余韻を語っている中、いよいよQuintetの出番がやってきた。五つの鼓動が、会場に居る誰のものより加速する。大きく息を吸い、吐き出す。司会者の声が自分達の出番を告げ、五人はステージ中央へと足を踏み出した。
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