空のギター
 頼星と隣同士で暮らしているマンションへ帰宅した雪那は、自室へと駆け込んだ。部屋には幾重にも積まれた音楽雑誌や、たった今背中から下ろしたギターケースなど、ほぼ音楽に関する物ばかりが並んでいる。

 雪那は本棚をガサガサやり、使い込まれた一冊のノートを取り出した。そして、いくつもの付箋が貼られた内の青い付箋のページを開き、ジッと眺める。



「ファンのみんなへメッセージ、か……そろそろ“本当のこと”言わないとダメだよね?お姉ちゃん。」



 新しい曲の発売に合わせて、ファンに真実を伝えると決めていた雪那。その前に、どうしてもやらなければいけないことがあった。ファンのみんなに心中で謝りながら、カードのメッセージを書くこと・謝罪の文を考えることよりも、“それ”を優先させてもらうことにする。



「……こっちの方もケジメ、付けなきゃいけないんだよね……」



 夕方の静寂の中、ポツリ、呟く。音楽ディスクが入っているケースをこれまたガサガサとやり、一枚のMDを探し当て、雪那は懐かしそうにそれを眺める。やがて、静けさの暗闇の中にパッと音の明かりを灯すかのように、そっとコンポの電源ボタンを押した。
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