私の王様

美香が食べ終わるのをぼうっと待つ。

頭に思い浮かぶ、大好きな人と大切な姉の姿にまた胸が痛んだ。

不意に、ざわざわとまわりがざわつく。
なんだろう?

「藤子」

――――え?


スッと目の前の机の端にスーツが見えた。

視線を上げていくと、長身に、後ろへ軽く流された髪、整った顔に切れ長の瞳、ブランドであろうスーツに身を包んだ―――


「東大寺、斎‥‥?」

「お前、いい加減フルネームはやめろよ‥‥」


見慣れた少し不機嫌そうな顔は、間違いなく、昨日お見合いした男。


「な、ななななななんでいるのよ‥っ」
「驚きすぎ。」
「驚くわよ!次期社長が会社さぼっていいの!?」
「いや、そこかよ」


冷静に突っ込みを入れる彼とは対照的に私は混乱するしかないが、まわりのざわつきもこのやたら美形男の登場のせいかと妙に納得する。


「迎えに来たに決まってんだろ」
「は?誰を」
「お前以外誰がいんだよ」


はぁ、と溜め息つかれても。

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