腹黒王子の取扱説明書
「麗奈をお願いしたいんですが」

俺はママに向かって爽やかな笑みを浮かべた。

源氏名ではなく、麗奈と言ったのはわざとだ。

彼女との関係を匂わせた。

「今日も持ち帰ります?起きてるときは、なかなか手強いわよ」

どこか俺を値踏みするような視線。

「承知してますよ」

微笑みながらも、気持ちは焦っていた。

この会話を早く終わらせて早く麗奈を連れ出したい。

あの中年男にこれ以上触れさせるのは我慢ならない。

あれは……俺のだ。

「それで、今日はどうします?」

「では、ドンペリのプラチナをママに。それで、麗奈を持ち帰ります」

「悪くないわね。良いわ」

商談成立。

ママが妖艶に微笑んだ。
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