腹黒王子の取扱説明書
「まあ、君には迷惑な話か」

前田先生が意味深に微笑む。

「これは、俺の独り言。俊は女嫌いなんだ。普段は誰に対しても笑顔だけど、それは処世術でね。あいつは自分の本性を身内にも見せない。俺にも本音は言わないしな」

「……杏子もそんな専務を気持ち悪がってます」

「……はは。妹にも隠してるんだからな。あいつはね、子供の頃に母親に捨てられたらしい」

「捨てられた?」

何の苦労も知らずに育ったお坊っちゃんだと思った。

容姿に恵まれ、頭も良くて、実家もお金持ちで……。

誰もが憧れる存在。

「あいつ母親は俊の父親と結婚する前はホステスだったみたいなんだが、俊の実家とあまり仲良くなかったのか、よそに男をつくって俊を置いて出ていったらしい」

……俊の母親がホステスだった。

だから、余計にあのバイトを毛嫌いして、私の事を悪く言うのだろうか?

少しだけど……彼の気持ちがわかるような気がした。

自分が傷つけられるのは納得いかないけど……。
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