腹黒王子の取扱説明書
「キス」

俊が私の頭をつかんで熱っぽい眼差しを私に向ける。

彼の顔が迫ってくる。

逃げられない!

ぎゅっと目を閉じるが、いつものような感触がない。

あれ?

不思議に思ってそっと目を開けると、俊がぐったりして苦しそうに肩で息をしていた。

ホッとしたような……ちょっとガッカリしたような……。

ガッカリ?

ううん、そんなわけない!

でも、俊はキスする元気もない?

ひょっとして熱あるのかな?

恐る恐る俊の額に手をやると、すごく熱い。

四十度くらいありそうだ。

この高熱。やっぱり私の風邪が移ったかも。

無理して夜まで仕事なんかするからよ。

「ちょっと俊!」

声をかけるが、俊は辛そうに「う~ん」と身じろぎするだけ。

男性なのにこの色気は何なのだろう。
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