腹黒王子の取扱説明書
麗奈の父親はずっと彼女が来るのを待っていたのかもしれない。

心電図モニターの残酷なアラームが鳴る。

看護師がモニターを止め、医師が麗奈の父親の瞳孔を再度確認している間も、麗奈は呆然としていた。

「姉さん」

麗奈の弟が彼女の肩に手を置く。

彼の目にはうっすらと涙が浮かんでいるが、麗奈はただじっと父親の方を見ている。

目の前の現実が夢か現かわからない。

彼女はそんな顔をしていた。

泣くという感情さえも忘れているように思える。

生きている父親に会えたのはほんの一瞬。

でも、それでも麗奈を無理矢理連れてきて良かったと思う。

その後、麗奈の弟と相談し、葬儀屋を呼んで遺体をセレモニーホールの中にある安置所に運んでもらい、三人で付き添う事になった。
< 196 / 309 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop