腹黒王子の取扱説明書
それが麗奈の今の心情を表しているかのようで、見ていて辛い。

彼女はショックで泣くこともできない。

そんな麗奈の身体を温めるように抱き締めていると、少し気を許したのか麗奈は俺に寄りかかってきた。

それだけ弱ってるって事か。

「私……ずっと父が許せなかった。母を裏切って他の女の人と浮気した父をずっと憎んでた」

麗奈の告白に俺は相槌を打つ。

「うん」

「だから、一人暮らしを始めてからは、ずっと父の事を死んだものと思い込もうとしたの。友達に父の話をする時は……いつも過去形で……」

「でも、偉かったよ。最後に言葉をかけられて」

俺は麗奈の髪を優しく撫でる。

「……俊に言われなければ……多分ずっと父から逃げてた。今でも……父の事が憎い」

「無関心よりいいんじゃない?」

「……俊の事も嫌い」

「それはどうも」
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