俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜
「ならイイんだ!」

「ん?なんのことだ?」

「頼みがあんだけどさ。」

「ああ。」

「怪我のことは、誰にも言わないでほしいんだわ。」

「ああ、別にいいけど…なんで?」

「同情されたくないんだ。それだけだ!」



大学に入ってから、選手として、これと言った活躍の場がない駿祐の、

これでまた、先送りとなったと思われる代表への道は、厳しく、険しいものだった。


将来、スポーツトレーナーに向けて、勉強に励む駿祐にとって、
柔道整復師の資格という、もう一つの目標があったことが、ヤケにならずに済んだ救いとなったのだろう。


そして、目標としてる大会が終わるまでは、
意欲をキープさせておくためにと、
慶太に、自分の怪我を隠すところなどは、

リサのそばで学習した、コーチングの真似ごとなのか?
同じスポーツをする者として、応援する気持ちからのことなのか?
兄としてか?…理由は分からないが


その冷静な様子は、
代表選手をめざす者と言うよりも、
まるで、育てる側に徹している者のようで…


この決断が、近い未来、どんな結果を招くことになるのかなんて、
この時の駿祐は、不安には思っていなかった。


本当にこれが、すべてにおいて良いことなのか?
と、考えることはあっても、
それからでも、幾らでも何とか成る…そんな思いが、あったのかもしれない。


偶然にも、あんなことがなければ…
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