妖しがりて寄りてみるに

振り返って、出口のほうに向かおうとしたとき、腕を強くひっぱられた。

「悪い子だなぁ」


そのまま、布団に引きずりこまれる。


何が怒ったのかわからないまま、目の前に蓮くんの顔があった。


体を押し付けられて、全然身動きが取れない。



「そんなにキスしたかったの?」


蓮くんは、不敵な笑みを浮かべて、私を優しく撫でた。



私は、期待と不安で震えてしまいそうだった。


キス、したかったんだと思う。

じゃなきゃ、寝顔なんて、きっと見てない。



でも、蓮くんはそのまま布団から出てしまった。


「朝ごはん、ありがとう」


にっこり笑って朝ごはんを食べ始める。


私も、慌てて布団から出た。


すっごくドキドキした。



蓮くんの強引さが、胸を締め付ける。



「ヒヨちゃん、昔ここに来たときのこと覚えてる?」

私は、素直に首を振った。


「みんなで一緒にかくれんぼしたよね」

なんとなく、そんなこともあったかもしれない。

「謙一郎が鬼でさ。
 ヒヨちゃんが一人で隠れるの怖いって言うから、一緒に隠れてたんだよ」

「よく覚えてないよ…」


「フフ
 一緒にいるのに、ヒヨちゃんたら、やっぱり怖がって…ずっと手を繋いでて

その時からかな。

僕はヒヨちゃんが好きなんだよ。」


まっすぐ目を見て、蓮くんはそう言った。

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