海までの道 ~あなたと私の距離~
海に着いた時には、ワイパーを動かさなくては前が見えないくらいの本降りになっていた。
「降ってきちゃったな」
車を駐車場に停め、雨を見つめながら航太が言った。
窓ガラスには、次から次へと雨粒があたり、列をなして流れ落ちる。
海は、いつもの青く輝いている海とは違い、茶色くうねり、白い波が砂浜に強くぶつかっている。
「ごめんな、急に。しかも雨になっちゃったな…」
『ううん。航太と一緒にいれるだけでうれしいよ。雨の海も始めて見たし』
「そうだな。俺も雨は始めてかも…」
航太はそう言って、少し座席のシートを倒した。
「和奏、俺の話聞いてくれるか…」
『うん…』
不安でいっぱいだった私の手を握ってくれた航太の手はもっと、震えていた。