【完】山崎さんちのすすむくん
そして、満を持して迎えた六月五日。
朝五ツ(この時分7時前)頃に桝屋へと向かった武田助勤率いる数人の隊士は、難なく桝屋の主人、桝屋喜右衛門を捕らえることに成功した。
その蔵からはあの時の言葉通り刀や槍、そして大量の銃や火薬が見つかった。
血判状などの文書も多くあり、最早言い逃れなど出来ない状況。
それなのに奴は頑なに口を割らなかった。
土方副長自ら拷問にかけるまでは。
聞いている者までがそのおぞましさに顔が歪む程、苦悶に満ちた悲鳴が屯所内に響いて暫く。
じりじりと日が差し、蒸し暑い筈の空気の中、ゾクリと背筋に冷たさを感じる程に冷えた笑みを浮かべたそのお方が再び表へと姿を現した。
「手当てしてやれ、大事な生き証人だ」
薄ら笑いを浮かべたその人が横を通りすぎると、ふわりと鼻についたのは煤っぽい蝋の臭い。
「わかりました」
多分、土蔵ん中は死んだ方がましやと思うくらいの何かが行われとったんやろな……。
この新選組の為やったら完璧な鬼になれる副長にはほんま、平伏するわ。
乾いた喉を潤すようにごくりと唾を飲み。気を引き締め直すと漸く静かになった土蔵へと足を向けた。
「京に、火を?」