【完】山崎さんちのすすむくん
遺された者として



慶應元年 五月二十五日


曇り



今日、徳川家茂公の下坂に伴い松本先生も京を発たれた。


今後何かあれば、松本先生の弟子で木屋町に屋敷を構える南部精一郎殿に相談することになる。


とは言え隊士達に何かあれば、いの一番に動かなければならないのはこの俺。


改めて気を引き締めなければと思う次第である。


しかしながら先日の健康診断の日、先生が屯所の汚さ、多種に渡る病の蔓延、西洋式の療養のあり方を局長らに訴え説いてくれたお陰で、屯所内は見違えるように綺麗になった。


病人は一つの部屋に集められ、まるで養生所のようである。


あっという間に湯殿まで用意され、土方副長の判断力と行動力には心底驚かされるばかりだ。


今まで面倒だとなかなか風呂にいかなかった連中も入るようになり、体調不良の人数も些か減ってきたように思う。


俺も少しは安心だ。


まさか豚や鶏を飼うことになるとは思わなかったが。


まぁ食してみると悪くない。


殺生を嫌う西本願寺の坊さん達はかなり不快そうではあるが仕方ない。


今まで腐敗臭を放つばかりであった残飯を与えるだけで育ってくれるし、隊士達の精もつく。


一石二鳥とはこのことだろう。



< 331 / 496 >

この作品をシェア

pagetop