【完】山崎さんちのすすむくん
君の名を



慶應二年 九月二十七日






朝から冷たい雨が降り続いた一日だった。


昨日に引き続き、今日も局長と副長、参謀の御三方は時局について意見を交わされたようだ。


先の長州の第二次征討中に将軍家茂殿が亡くなられ、それから二ヶ月経った今も未だに次の将軍が決まっていない。


喪に服すことを理由に休戦に持ち込んだ幕府の事実上の敗けは周知の事実。


逆に長州の勢いを世間に知らしめるという結果になった。


何やら怪しい雲行きに、幕府側に与する我が新選組の幹部らが意見を交わすことは当然なのであろうが、ここでまた一つ新たな問題が浮上した。


局長と参謀の意見の相違。


このまま今まで通り幕府についていこうという局長に対し、参謀はそれに待ったをかけたらしい。


弱体した幕府では異国の脅威からこの日ノ本は守れまい、と。


副長は言うまでもなく局長の意に添い動かれる。


故にその場は参謀が折れ、結局のところはうやむやになったらしいが、それはこの先確かな亀裂を生む気がしてならない。


副長もまたそれを危惧しているようであるが、今はまだ局長の腹の虫が収まらぬご様子。


昨日の敵は今日の友とはよく言ったもので、その逆もまた然りであるようだ。



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