【完】山崎さんちのすすむくん
稽古場に棒を片付け廊下を歩いていると、広縁の先の角をひょろ長い人物が曲がってくるのが見えた。
「あ、山崎さんっ」
長い黒髪を揺らした沖田くんだ。
「どうかしましたか?」
「いえ、別にそういう訳ではないんですけど……土方さんの部屋でゴロゴロしてたら『山崎のところにでも行ってこい』と追い出されてしまって」
「……自分の部屋でゴロゴロしては如何でしょうか」
そら追い出されるっちゅうねん。だって仕事の邪魔やもん。
「むぅ、山崎さんまで同じこと言うんですねっ。非番を一日ずっと部屋にいたらどれだけ暇だと思います!?」
そらそやけど。
ちゅうかなんやその『むぅ』て。どこぞのケツ顎妖怪とは比べもんにならへんくらいかいらしやんけ。
おっちゃんドキドキしてまうわ。
「……わかりました、ではついてきてくださいね」
ふーと短く息を吐き、ある意味これも副長の命と、そのお方の部屋に行くのを諦め踵を返す。
己の部屋で大人しくしているのが嫌、と言うのならもうあそこしかないだろう。
「さぁどうぞ」
「えぇー此処ですかぁ……」
スッと障子を開けて中へ案内したそこは養生室の一つ。
「私の部屋は相部屋ですからね。此処なら今日は誰もいませんし、好きにゴロゴロ出来ますよ。それにまぁついでですから私も薬を作ろうかと」
「その臭いがあまり好きじゃないんですけど」
「我慢なさい」
何で皆してそう嫌がるかな……慣れたら結構癖になる匂いや思うのは俺だけなんやろか。