first love
「……過去が辛いなら、苦しいなら、受け入れなくていい。


あたしが代わりに受け入れる。
翔の分まであたしが背負うから。


翔が楽になるなら、あたしに背負わせてよ。

あんたはいつも辛いこと独り占めする、ズルイよ」






あたしはこんな住宅街のど真ん中で翔を抱きしめた。













そんな顔しないで。






あたしにその痛みちょうだいよ。







「この場所は……」








翔の声が震えてた。















どんなことも受け止めるよ。


翔のぶんまで、ちゃんと











でも、







それはあたしが想像してたよりもずっとずっと











深い闇。










「母さんが殺された場所」



















瞬き一つできず、あたしは翔の顔を見上げた。












光一つ見えないその瞳は

何を見ているの?











翔はどんな風に生きてきたの?




この場所で生まれ、
育ち、


歌舞伎町で、



あんたには何が見えてたんだろうか。







それは、きっとあたしじゃ想像できないほど



真っ暗な世界。











「父親が、母さんを殺した場所だよ」

















ねぇ、翔。






あんたの目には涙一つ浮かばない。








悲しみより憎しみが勝つのか、

もうそれさえ感じないほど感情を消して生きてきたのか、



あたしには分からないけど、









「なんで、美華が泣くんだよ」


フッと笑う翔。




ほら、またそうやってあたしの前でさえ無理をする。

平気なふりをする。






平気じゃないくせに。












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