first love
「…無理だよ」
あたしはそっと目を開けた。
「前までは殺せると思ったのに」
翔はあたしに覆いかぶさって抱きしめた。
「俺の母親、浮気してたんだ。」
「…うん…」
「それがバレて父親がカッとなって母親を刺したんだよ。
包丁で。
30箇所以上刺傷あったって。」
翔の顔は見えなかったけど、声が震えてた。
「ある夜にさ、夜中までふたりの喧嘩する声が聞こえて、物音もすごくて、子供だった俺はすげー怖くて。
突然おさまったと思ってリビング行ったらさ血まみれの父親が俺を抱きしめてさ。
ずっと言うんだよ、ごめん、ごめんって。」
「うん」
「俺はなんのことか分かんなくて。
でも父親は血まみれだしさ。
わけわかんないながらも怖くて。
父親に抱きしめられながら見えた先は部屋中血の海。」
「うん」
「俺は父親を振り払って母さんを探したんだ。
母さん、キッチンで真っ赤になって倒れてた。
全部理解した。
これは、父さんの愛がこうなったんだって、子供ながらに分かってた」