first love
「お前、中途半端すぎるよ」


颯爽と歩くあたしを追いかけて手を掴む。

何度振り払っても、
何度も引き止める。




「結婚するって、約束したのに」

「結婚って、あたしを縛り付けるための約束?」

「そうだよ。
独り占めするための手段だよ」



…何それ…



「翔は、あたしと結婚してあの店をやめさせて、あたしと店長をもう二度と会わせたくないだけでしょ」


「もちろん、それもあるよ。
けど美華だってそのつもりで結婚するって言ったんじゃねーの?」




翔はわかってない。


あたし、店長がいたから今まで歌舞伎町にいれたんだよ。

つらかったときも
苦しかった時も

そばにいたのは店長だったんだよ。



翔は一番そばにいてほしいとき
いてくれなかったくせに。



あたしじゃない誰かといたくせに。




「…あたし…店長が大切なんだよ…」


「…なんだよ、それ…」


翔の手があたしから離れる。


「でも、それは恋愛感情じゃない。
あたしが好きなのは、ずっと翔だけだよ。
それじゃ、だめなの?」



翔は何も答えなかった。




「店長のとこ、行ってくる。
すぐ帰るから」



あたしは再び歩き始めた。


振り向かなかった。

振り向いたらきっと、
あたしまた翔に流される。
我慢しちゃうよ。



あんたの切ない顔は 見たくないんだよ。



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