うちに動物が来た
「ふぇ?」



間抜けた声を出して少女は振り向いた。
少女の大きな瞳には人間姿の俺が映っていた。

ワイシャツに深緑のベストを羽織り、七分丈のズボンに靴下。
冬だと少し寒いがこの格好で外に出る事は無いのだから別にいいやと実家から持ってきたものだった。



「ひ、ひゃぁっ、」

「怖がらないで。俺は君の両親に拾われた犬なだけだから」

「ままぁっ!!ぱぱぁっ!!」



まぁ好都合か、どうせ正体を明かさなければならなかったのだから。
駆けつけた両親と“ねぇね”は俺を見つめ一瞬固まった。

少女を泣かせるというのはあまり好ましい状況ではないが、事情が事情だ。



「…君は」

「昨夜、貴女方に拾われたハスキー犬です。名前ははすと言います」

「一体何なの?」

「…少し、お話させて下さい」



両親の背に隠れ俺を見つめる姉妹を尻目に俺達の存在の事、人間界とは別に俺達の世界がある事、3ヶ月だけ人間界に住める事を話した。

3ヶ月の間、この家で暮らさせてほしいと頼むとぽふ、と下から伸びた小さな手が頭を撫でた。
妹の方だった様で、花の様な笑顔を向けてきた。
そんな妹の態度に安心してか、両親も姉も快く受け入れてくれた。

この家族は暖かい、俺はそう感じた。
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