ファイブコンプレックス
一通り終わると、部屋は急に静けさに包まれる。それを美樹も、姉と一緒に受け止めていた。満足に音を含み、吸い込んだ物それぞれに、二人はぎゅっと圧迫された。これがいつも心地いい。
騒いだ後の急な静寂のギャップが、美樹は好きだった。姉はどうかわからないが…きっとそうだろう。勝手にそう確信した。しばらく二人は言葉を発することなく、ただこの圧迫感を感じていた。

次に意識が戻ったのは、ドアが開かれたその音だった。父だった。

「何やってるんだ、ボーッとして」

軽い放心状態になっている娘二人を見て、相当驚いたようだ。今日の出来は、今までで最高だった。

「父さんこれからスタジオに行くけど、二人も来るか。しばらくアンプに触ってなかったしな」


すぐに笑顔になるの美菜とは逆に、美樹の顔色は即座に暗転する。それに気付くことのない、二児の父。
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