ワガママ
chapter1*

「ねぇ、碧空(ソラ)。 私たち入学式遅刻するんじゃない?」 
「え~まだ寝てたいよ。 柚、もう少しだけ寝ようよ!」
「だめ!起きて碧空! 早く準備するよ!」
隣で布団に潜ったままそう言うのは中学の時に仲良くなって今でも親友の柚(ユウ)。
中学の時転校してきた私に初めて話かけてきてくれたのがきっかけで気づくと一緒にいた。
両親は私が中学入学したばかりの時に仕事で海外に単身赴任が決まり今でも向こうに住んでいるから家は私とたまに柚がいる程度しか使っていない。 
柚の家は複雑で、柚が中学一年生のときに父親が柚と母親を置いて家を出た。 そのすぐ後に母親が過労で亡くなったため広い一軒家は柚しか使っていない。
独りで生活することに孤独を感じた私たちは毎日のようにどちらかの家でお泊まり会をしている。
柚にべったりな私は高校を卒業したら同じ大学に行って一緒に住む約束もした。

「友達できるかな、、。」
不安になって無意識に呟いていた。
「出きるよ。大丈夫!私が着いてるじゃん!」
柚は最初少し驚いた顔をしていたけど、満面の笑みでそう答えてくれたから不安は消えていった。
「碧空、髪整えてあげる!」
胸の下まである色素の薄いサラサラの髪は私の自慢でもある。金色に近い茶色の髪はイギリスのハーフである父から譲り受けた宝物だ。
中学のときクウォーターだからむかつくとかいう理不尽な理由でいじめにあった。 
そのときから少しずつ人と関わることを避けていった。
でも、柚だけは羨ましいって誉めてくれた。
柚はヤンチャな女の子で髪は茶色に染めて目にはブルーのカラコンを入れている。
ふわふわの髪はかわいいのにサッパリしたショートカットだ。
陰口を言われていても気にしない堂々サッパリとした性格で弱い私とは正反対の性格だ。
「はい、出来上がりー♩」
は、早い、、!まだ5分たってないじゃん!
「男子はね、ゆるふわ巻きが好みなんだってさ♩ 碧空、入学早々運命の王子様に出逢えたりして~♡」
「私理想高いから絶対出逢えないよ~。。」
「どんな人がタイプなの?」
ニヤニヤしながら柚が聞いてくる。。
「内緒~♡ そろそろ出よっか!」
「うん! 行こっか!」
誰もいない家にいってきますと告げて学校に向かった。


「碧空、、、どうやってクラス表見に行く、、?」
「スーパーのセールみたいだね、、」
今、私たちは校門に立って迷っている。
なぜなら、クラス表がある体育館まで行列、、いや、まるでおばさま方がスーパーのセールで格闘するような状況なのだ。
「碧空。絶対、絶対私の手離しちゃだめだからね?」
柚は私の手をしっかりと握って体育館までの道を早足で急いだ

「ふ~、疲れた。」
「凄かったね、、あ、柚ちゃん!
あったよ、クラス表!」
「い、一緒だ!!」
「柚ちゃんと一緒だ、、!」
まさか同じクラスになれると思ってなかった私たちは喜びのハグをした
ちょっとだけ周りの目が痛かったけどね。

入学式がおわって今は先生が高校生活について熱く語っているが、私はそんなことどうでもよくて話も流れていくぐらい他のことで頭がいっぱいだった。


原因は私の隣が空席だということだ。

「 涼風(すずかぜ)の隣の席の碓氷(うすい) 青(はる) はしばらく欠席だから来たときは仲良くしてやってくれ」

先生はそう言い残して教室を後にした。

碓氷 青くん っていうんだ、、
どんな子なんだろう、、
青が好きな私はきっと空みたいに澄んでいて綺麗なんだろうな~とか考えていた。
早くみてみたいな。

「どんな子なんだろうね、青くんって、、?」
柚が興味深そうに聞いてくる。
「さぁ?あんまり興味ない、」
思わず思ってることと反対の事を言ってしまった。
「かっこいいかな~♩ 青くんとか名前からかっこいいよね♬」
「隣いないと寂しいから早くきてほしいな、、」
「気になる?青くん」
「え? うーん、、ちょっとだけ、ね」
「前の席の子たちが言ってた、青くんと同じクラスなんて夢みたい♡って。 かっこいいんだろうね、青くん」


そんなこと言われたらますます気になっちゃうよ、友達になれるといいな、、なんて淡い期待を抱きながら空を見つめた
< 2 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop