情熱のメロディ
 でも……こんな風に好きだと言われたら、アリアはもう他に見つけられなくなる。音楽を奏でる目的を――自分の想いの行き先を。

 「名誉なんていらない。私は、ただ……自分に正直に生きたい。音楽は、本能の炎を灯してくれるから……だから、私は、音楽を……っ、貴方への想いを、貴方を!捨てられない!」

 アリアは一気に捲くし立て、カイの首に腕を回して抱きついた。カイはアリアの身体を受け止め、2人はそのまま唇を重ねた。先ほどよりもしっとりと、長く合わせた唇――そして、どちらからともなく啄ばむように何度も角度を変えて重なっていく。

 「後悔なんてしません。私の炎は、カイ様のためにあるのだもの……」

 唇が離れてアリアがそう言うと、カイはアリアの手を引いた。タイムリミットなんてないのに、何かに急かされるように2人は階段を駆け上がっていく。

 永遠に閉じ込められたままでもいい。それが、カイのいるこのお城の中ならば。カイが、ずっと隣にいてくれるのならば、アリアは喜んで飛び込もう――…

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