君が笑うなら
「ご飯食べてく?」
「え、でも母ちゃんが」
「大丈夫、君のお母さんには最高の料理を振舞ってるから。何なら電話掛けてみる?」
「……電話、ないんです」
菜穂の家は、携帯すらもつながっていないのだ。
料金が払えないから。
学校側からも、連絡が取れないと不満の声が届いているが、変な勧誘もうっと惜しいので、菜穂はそれでいいと思っている。
「そっか、買ってあげようか、電話ぐらいなら」
「ぐらい、じゃありません。これだけしてもらってさすがにお願いできません」
「どうしてもかい?」
「どうしてもです」
「じゃあ、ご飯は、いいよね」
志和の悲しげな表情に押されて、菜穂は頷いた。
「じゃあ、座って」
椅子を引かれて、そこに座ると、菜穂の前に蟹のスープに天津飯、エビチリ、中華サラダにあんかけ肉団子という、中華メニューが並べられた。中華料理なんて、給食でしか味わったことがない。
「これ、全部いいんですか」
「うん、食べて」
いわれるが否や、菜穂は天津飯をかきこんだ。常におなかを減らしているな穂にとっては、給食のお変わりだけが救いだった。そんな菜穂にとっては、食事はさすがに要りませんとは断れないのだった。
「おいしい」
「よかった、お変わりも在るよ」
「いいんですかっ」
せわしなく箸を動かし、菜穂は勢いよくすべてを平らげた。