さよならさえ、嘘だというのなら

そのまま受け止めてはダメだ。

違ってるまま
流されちゃいけない。

俺はクルリとチャリの方向を変え、カンスケさんにもう一度頭を下げて道を戻り

凪子の家に向かった。

昨日からの出来事がグルグル頭から離れない。

たったの24時間に
色んな事が多すぎる。

暑い日差しを浴びながら
俺はまたチャリを猛ダッシュ。

丘の上にある
幽霊屋敷と呼ばれていた
凪子の家まで向かう。

なだらかな坂を上り
緑の細い小道を通る。

昨日はここで凪子と別れた。

両手の細い無数のリスカの痕を見せ
俺の腕の中で泣いていた。

柔らかな細い身体と
あの時の雨の香りを思い出す。

『颯大君って呼んでいい?』彼女は言った。

『私、ウサギ殺してないよ』彼女は言った。

そして俺は言った

俺がずっといる……って。

お化け屋敷と呼ばれる白い洋館が見えて来て、息を切らして玄関に到着。

お手伝いさんが二人いる噂。

どんなにチャイムを押しても
誰も出て来ない
返事も無い。

刈り取った草の匂いと風の音だけ周りに漂っていた。

屋敷の中にも
人のいる気配はない。

どこにいる凪子?
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