さよならさえ、嘘だというのなら

制服が夏から秋になり
乾いた風が山から降りてきて
野々村商店前で食べるおやつが
ガリガリ君からあんまんに変わる。

「日が短くなってきたね」

星座はもう秋で
部活の帰り
七瀬と並んでチャリで帰宅。

商店街の入口で
カンスケさんに深く頭を下げる。

「うちらさぁ」
七瀬がクスクス笑う。

「前より深々とカンスケさんに頭下げてるよね」

思わせぶりにそう言って「あーぁ」と大きな声を上げた。

「何だよ?」

「別に」

「ふーん」

「ムカつく返事だなぁ」

「お前が先に言ってんだろ」

「颯大可愛くない」

くだらない会話をして歩く俺達。

そのくだらなさが
平和って事なんだよな。

しばらく何も話さず歩いていると

「あの子のね……」
七瀬は急に話始める。

「あの子の靴を隠したの私なの」

凪子の靴か
そういえば
よく無くなってたらしい。

凪子と過ごした時間
一度だけそっと重ねた唇

この夏の出来事なのに
全てが夢の出来事……そんな気がする。
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