その瞳に映りませんように


予鈴が鳴り、クラスメイトたちがそれぞれの席に戻っていく。


私も自分の席に戻った。


「あ、ハシノさん英語の宿題やった?」


席についた瞬間、後ろからユズキくんが話しかけてきた。


私は振り返りながら、

「うん。英文意味分かんなくて、結構ダルかったよ」と答えた。


「あのー見せていただいてもよろしいでしょうか?」と彼は軽く会釈をしたため、

「えーどうしよっかなー」と私はふざけて渋ってみた。


すると、

「いーじゃん。減るもんじゃないし。お礼はちょっといいチョコ1つでどう?」

と言って、その目をやわらかく細め、瞳に私の姿を映した。


あのコンビニ前の出来事以来、ユズキくんと目が合う瞬間が増えた。


そして、私にだけ向けてくれていることに気がついた。


普段とは違う、優しい目を。



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