その瞳に映りませんように
うおっとこれは事故、事故!
「…………」
ほんの少したれ目なのに、優しそうには見えない。
つまらなさそうでけだるそうだけど、冷たいわけでは無さそう。
よくよく見ると、幅は狭いけどまぶたは二重。
黒目は上まぶたに接しているけど、下まぶたからは少しだけ浮かんでいる。
ユズキくんのいつもの目は、今、確かに私を見つめている。
そこに吸い込まれるかのように、私は彼に顔を近づけ、目を閉じた。
その唇は、温かくて、やわらかくて、私の中の良い感情も、嫌な感情も全て受け止めてくれるように思えた。
「俺、ハシノさんのこと好き」
いつの間にか彼はまぶたを細め、その声のように心地よいまなざしを私に向けていた。
そうだ、この優しい目――。
ユズキくんが時々見せるその目だけは、彼の思いをそのまま表している。
いつか、その目に物足りなさを感じていたけど、今は違う。
君のその瞳に映っていたい。
「私も好き。ユズキくんの目も。ユズキくんのことも」
そう伝えると、ユズキくんは頬を赤く染め、「ほんと?」と驚いていたが、
その目は、本気で驚いているか分からないような通常モードのままだった。
思わず、ぷっと笑ってしまう。
やっぱり私は君のその目が好きだ。
でも、私だけに見せてくれる優しい目はもっと好き。
そして、君のことがとても大好きだ。
いつまでも、その瞳に私以外映りませんように。
「あ、コンタクト。シャツのボタンのあたりについてるよ」
「本当だ! あははは!」
☆おわり☆

