その瞳に映りませんように
「……ごめん、俺今ハンカチ持ってないんだけど。そろそろ涙拭かないと明日目腫れちゃうよ」
「あ……え? うん!」
うわ、泣いてたのバレてるし。
それよりも今は、えーと、何か拭くもの。
ブレザーのポケットを探ったが、何にも入っていなかった。
「ハンカチ忘れた……。って……あーっ!」
し、しまった!
とりあえず涙をぬぐおうと、手で目をこすってしまった。
「どしたの?」
そう聞くユズキくんの顔が、半分ぼやけて、半分くっきりと見える。
「コンタクト落としちゃった! うわぁ、2ウィークのやつで今日新しくしたばっかだったのにー!」
「マジ? もったいないじゃん。探そうー!」
いつぞやと同じように、私たちはなるべく足を動かさないように手で床をさすりながら捜索を開始した。
少しずつ星が瞬きだす空の下、グラウンドからのナイターの光も頼りにあたりを凝視する。
「ないなぁ~」「ないねぇ~」
エリアをつぶしていく度に、その声たちは近づいていく。
「あーあ。暗くなってきたしあきらめようかなぁ」
そう言って、顔を上げると、いつの間にかユズキくんの顔が間近にあった。