ハロー、マイファーストレディ!

さぞかし手のひらを返したように俺の悪評を流しているだろうと画面を見つめた瞬間。
映し出されたテロップに、思わず息をのんだ。

“緊急会見!婚約者が語る汚職疑惑の真実”

テロップの背後には、マスコミにもみくちゃにされながら、アパートから出て車に乗り込む真依子の映像。
一瞬何が起きているのか理解できずに、頭が真っ白になる。衝撃は母の告白よりもこちらの方が遙かに上だ。

「高柳議員の婚約者である内海真依子さんから、今回の騒動についてお話があるということで。まもなく記者会見が開かれる予定です。現場には溝口記者が行っています。溝口さーん。」
「はい、溝口です。こちらは会見が行われる予定の、高柳議員の地元事務所前です。すでに、多くの報道陣が詰めかけています。こちらには、もうまもなく内海真依子さんを乗せた車が到着する見込み……あっ、今、到着しました!内海さん、今日は何をお話される予定ですか??」

車から降りると同時に、沢山のフラッシュが光る。それでも、真依子はまっすぐ前を向いて、報道陣からの呼びかけに軽く会釈を繰り返しながら、事務所の入口へと歩いていく。真依子を進ませるために、秘書の橋元ががっちりガードしていた。

「……とにかく急いで事務所に戻ってくれ、頼む!」

運転席に向かって叫ぶと、すぐさま事務所の電話と大川の携帯に電話を掛ける。どちらも話し中だ。

「くそっ!!」

真依子の携帯と、事務所に引いてある非常用の番号にも掛けたが誰も出ない。状況がまるでのみ込めていない俺は、一人焦っていた。


“真依子、君は何を考えてる?”

事務所に入る瞬間、カメラに向けた強い意思の宿った真依子の瞳に。

どうしようもなく、胸騒ぎがした。
< 196 / 270 >

この作品をシェア

pagetop